深海魚





遥か頭上に満ちている
紅の塵に触れぬよう
異形の体をくねらせて
水底に沈む

視界は無く
声も無く
此処は安らか

ぶくり  ぶくり  泡が
中身を浚って
洗われただろうか
埃塗れの僕
ぶくり  弾ける  前に
蹲った

悲鳴は  聞こえません


柔い糸に絡まって
揺れる光を見たのなら
奇怪の骸を震わせて
膨張してゆく

希望は無く
色もなく
其処は

ぶくり  ぶくり  泡が
内側で弾けて
変われただろうか
崩れ落ちる僕
ぶくり  壊れた  後で
微笑んだ

静寂に  断末の魔






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2009/5/9  しき