樹海の猫



鈴を貰った
古ぼけた色
優しい手 頭を撫で
りん と鳴いた

錆び付いた二つの目に
自分によく似た
何かが住んでいる

けれど見ないふり

深い深い森の中
ひげも役には立たないらしい
藻掻き足掻いた泥の中
他の色にはなれないらしい

名を呼ばれた
知らない名前
寂しい手 背中を撫で
りん と泣いた






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2012/1/18  しき